東急8500系の地味な差異を観察する






ここでは、現役時代に調査した、「細かすぎて伝わらない東急8500系の地味すぎる差異」を紹介していこうと思います。模型再現の参考などにご利用ください。

※並び順に意味はありません。
※Jobanが勝手に行った、私的な調査結果です。
※無断転載は固くお断りします。

目次
1.ランボード
2.クーラー補強板
3.助手席ワイパー
4.運転席ワイパー(電動)
5.急行灯
6.帯色
7.乗務員ステップ
8.前面の台枠処理
9.無線アンテナ
10.自動放送装置
11.車端部座席
12.主抵抗器形状
13.パンタグラフ
14.前面貫通扉
15.前面絶縁体回り込み
16.非軽量クーラーキセ
17.軽量クーラーキセ


1.ランボード

この一言だけでピン!と来る方は相当マニアだと思いますが、これ自体はそこそこ知られているかもしれません。
8500系の6次車(1974年度製)〜12-2次車(1980年度製)の車両(いわゆる非軽量車)は、8000系3次車譲りで屋根肩に点検用のランボードが露出する屋根になっていますが、1980年代に従来の布屋根から13次車以降に準じた塗り屋根に改修されました。
その際に絶縁塗装の関係でランボードの露出が目立たないようになりました。その後1997年から始まった更新工事では、屋根の改修が行われ、再びランボードが露出するようになっています。そのため、更新の施工の有無によって屋根に差が生じています。


左:デハ8706(更新車)、右:デハ8715(未更新車)

未更新車はランボード端に段差がなく、そのまま屋根肩に向かっているのに対し、更新車はランボードから一段下りて屋根肩に向かっています。これだけでは分かりにくいので…




8627F(未更新車):ランボード埋没




8628F(更新車):ランボード露出

かなり微妙な差異ですが、更新車のランボードには妻面が確認できるかと思います。


8615F(未更新車):ランボード埋没

8615Fは埋没部がたびたび補修されいるのか、特に渋谷寄りの3両の屋根が縞々模様になっていて、非常に目立ちます。

このランボードの法則には例外がありまして、未更新車の8614Fは2006年の伊豆急ラッピング化の直前に屋根が改修され、更新車と同様のランボード露出屋根になっています。




8614F(未更新車):ランボード露出
惜しまれつつ2020年6月に引退した8614F。伊豆急塗装以外にもこの編成には沼要素(!?)がたっぷり。

また、東横線に在籍した8000系には更新車でもランボードが埋没したままの車両もいます。
『鉄道ピクトリアル2017年3月号【特集】東京急行電鉄8000系』(電気車研究会)のp66に「本年度(1997年度)の8000系更新は従来の室内更新に加えて、屋根の改修メニューが追加され車体更新となった」との記載がありますので、それ以前の更新編成はランボードが埋没したままなのかなと思われますが、
初期の更新車である8021Fや8023Fの一部がランボード露出しており、状態の悪い車両のみ屋根改修を行った(あるいは後日追工事を施工した)と考えられますが、真相は謎に包まれています。

また蛇足ですが、未更新のまま長野電鉄に譲渡されたデハ8501・8601・8502・8602は、東急時代は例に倣ってランボード埋没でしたが譲渡時に改修され、現在は未更新車ながらランボード露出となっています。


長電デハ8501(未更新車):ランボード露出
(分かりにくいのでもっといい写真を見つけ次第挿げ替えます…)


2.クーラー補強板

これも知る人ぞ知るという感じでしょうか。




デハ8627のクーラキセ(標準)





デハ8615のクーラーキセ(補強板付き)

正式名称がないのでわかりませんが、デハ8615の先頭部のクーラーキセにのみ、ボルトで締められたカバーのようなものが元のクーラーキセに覆いかぶさるように装着されています。以前はデハ8503、デハ8607、一時期のデハ8614にも見られたようですが、2020年7月現在、東急に在籍する8500系の中では、このデハ8615が唯一のようです。
伊豆急行、長野電鉄に在籍する元東急8000系では複数車両確認できます。


伊豆急行クハ8014(元東急クハ8037)


伊豆急行クハ8017(元東急クハ8015)
4基とも補強板付きという圧巻仕様。


長野電鉄デハ8503(元東急デハ8503)
いずれも東急時代の補強板を踏襲しているようです。


3.助手席ワイパー





デハ8619のワイパー(黒ブレード)




デハ8615のワイパー(銀ブレード)

これまた僅かな差ですが、また8615Fが登場します。
2020年7月現在の東急8500系の中で、デハ8615の助手席側の手動ワイパーのみ、ワイパーの本体部分が銀色になっています。3年ほど前のデハ8542も銀ワイパーでしたが、検査の時に稀に交換されるようです。最近ではデハ8620も銀ワイパーで残っていましたが、2019年に廃車になりました。
長野電鉄では未だ多く残っています。


銀ワイパーのデハ8620(2019年4月廃車)


銀ワイパーのデハ8542(末期には交換、2019年7月廃車)


長野電鉄デハ8512(元東急デハ8602)も銀ワイパーのまま。余談ですが運転席側のワイパーも空気式のままです。

(2023/12/31追記)2021年4月には、引退間際の8636Fのデハ8636のワイパーが突然銀ブレードに交換され、ごく一部のコアなファンを沸かせました。


4.運転席ワイパー(電動)

運転席のワイパー(電動式)にも異形のものが存在します。




通常の電動式ワイパー(デハ8530)




逆に取り付けられた電動式ワイパー(デハ8535)

最初、ブレードの取り付け位置が違うだけかと思いましたが、根っこが太いアームと細いアームの位置関係が左右逆になっていることから、ワイパーそのものが逆に取り付けられているみたいです。
ネット上で昔の写真を見ると、2007年〜2008年にワイパーが電動化された当初は通常の取り付け方向だったようですが、2010年になぜか逆方向になっています…


5.急行灯

デハ8516、8634、8635、8536には急行灯がありません。16F、34F、35F、36Fは一度フルカラーLEDになったのち、大井町線所属の4編成(3色LED)とLEDをトレードして全編成前面は3色LEDに戻りましたが、なぜか急行灯は半分だけしか帰ってきませんでした。急行灯がどこに行ったのかは情報が無く、割とミステリーだったりします…



デハ8500では8516と8536に急行灯がない


デハ8600では8634と8635に急行灯がない
また、急行灯のレンズが幕車とLED車で異なります。


デハ8506


デハ8522

種別幕または運番幕と急行灯はセットなのでしょうか。(だとすればなおさら消えた急行灯について気になりますが…)
上記の理由から種別幕と行先がLED、運番が幕である長野電鉄のT1編成とT2編成は左右で急行灯のレンズが異なります。


長野電鉄T1編成(デハ8511)

6.帯色

比較的有名な差異です。
2019年3月時点では、デハ8506、8606、8516、8620の4両のみ赤帯が朱色がかったものになっていました。
『鉄道ピクトリアル2017年7月号【特集】東京急行電鉄田園都市線』(電気車研究会)のp89に、
「(2011年の)11月に出場した8630F以後3編成は先頭車の劣化した赤帯が張り替えられて赤みの濃い色調に変化した」
と記述がありますので、この4両はこの張り替え対象外になったという事でしょう。8606Fの帯を観察してみても、それほど状態が良いようには見えませんでしたが…


右:張り替えられていない帯
左:張り替えられた帯



デハ8606:張り替えられていない帯


デハ8619:張り替えられた帯

同じ光線で比べると一目瞭然かと思います。近年の検査では8642Fや8632F、デハ8520が張り替えられたようですが、いずれも廃車になっています。長野電鉄に譲渡された8500系の帯色は、退色しているか長電レッドに張り替えられていますので、2020年7月現在張り替えられていない帯色を拝めるのはデハ8516だけのようです。


長野電鉄デハ8512(元東急デハ8602):長電レッド


デハ8516
不思議なのが、編成単位ではなく車両単位で劣化次第張り替えという点。反対側のデハ8616は結構前に張り替えられています。


7.乗務員ステップ

8500系の15次車編成(1983年度製)である8631F〜8633Fの両端デハだけ、乗務員用のステップの取り付け向きが逆になっています。




デハ8530(10-2次車):内側に凸




デハ8531(15次車):外側に凸
何故か、16次車以降では8630F以前のステップと同じ向きに戻っています。



デハ8534(16次車):内側に凸


8.前面の台枠処理
8500系の顔面の特徴の一つ、台枠部の処理ですが、これにもいくつかレパートリーがあります。大まかに分けると以下のようになります。

1)プレス跡・平行タイプ
2)プレス跡・交互タイプ
3)プレス跡・複合タイプ1
3)プレス跡・複合タイプ2
5)プレス跡無し
6)ステンレス帯材貼付
7)軽量車

非軽量車は1)〜6)が存在し、かなり複雑怪奇です。

1)プレス跡・平行タイプ


現在ではデハ8515、8615、8629で見られます。


デハ8515(未更新車)



デハ8615(未更新車)



デハ8629(未更新車)

2)プレス跡・交互タイプ


8620Fの引退によって現在は見られなくなってしまいました。2006年ごろまでデハ8627もこのタイプだったようですが、現在は修繕(?)されています(後述)。


デハ8520(未更新車)


デハ8620(未更新車)

3)プレス跡・複合タイプ1


デハ8527は1)と2)を組み合わせた様相になっています。ツギハギ感がすごいですね。


デハ8527(未更新車)

4)プレス跡・複合タイプ2


デハ8529のみ、向かって左側は2)に示したタイプ、右側は全く溶接跡がないタイプになっています。


デハ8529(未更新車)

5)プレス跡無し


デハ8627は過去の写真を見ると2)になっていますが、2006・2007年頃のワイパー交換と同時期(?)に改修され、プレス跡が目立たないタイプになっています。その代わりにシワのようなものが見られますね。


デハ8627(未更新車)

6)ステンレス帯材貼付


1997年〜2001年には19編成の8500系に対して更新工事が施工されましたが、その際にほとんどの先頭車の台枠部分に、装飾か補強かは定かではありませんがステンレスの帯材が貼られ、プレス跡が見えないようになりました。


デハ8525(更新車)

例外的に8603F(現 長野電鉄T3編成)の両端デハは更新車ながら帯材が貼られていません。
うっすらプレス跡のようなものが見えますが1)とも微妙に違い、分類が難しいのでここに載せています。


長野電鉄デハ8513(元東急デハ8603)

さらに例外、8614Fと8623Fは未更新車ながら帯材が貼付されています。


デハ8614(未更新車)


デハ8623(未更新車)

8614Fは装飾の関係、かと思いましたが伊豆急色になる以前から帯材は張り付けられていたようです。また、デハ8628が未更新時代にすでに帯材が貼り付けられていたのも確認しています。

7)軽量車


8631F〜8642Fはこのタイプです。一見すると6)と同じですが、軽量車は幌枠と帯材に継ぎ目が見えるという軽微な違いがあります。


デハ8535(軽量車)


9.無線アンテナ

8500系の本来の無線アンテナは丸みがかった形状ですが、8614F・8626F・デハ8642のみ、5000系などの新系列と同じ角ばった無線アンテナに交換されています。


デハ8633:通常タイプ


デハ8614:角型タイプ


参考:2020系の無線アンテナ

8642Fに関してはデハ8642が角型なのに対しデハ8542が通常型、と前後で違う形状になっており、交換基準が不明です。ただ、過去の写真を見る限りでは、8614Fは屋根の改修時(その1のランボードの差異参照)にアンテナを交換したようです。
2020年6月に8614Fが引退したことにより、このアンテナを搭載した8500系は消滅してしまいました。


10.自動放送装置

デハ8634、デハ8637にのみ助手席窓上部に箱形の機械が設置されています。


デハ8623:助手席窓に見える箱形の機械は左右2つ


デハ8637:助手席窓に見える箱形の機械は左右と上部の3つ

余談ですが、デハ8606とデハ8642は左側の箱形機械がありません。


デハ8606:助手席窓に見える箱形の機械は右1つだけ

8606Fと8642Fの共通点といえば、東武非直通編成であることですので、左側の機器は東武関係のものと思われます。


11.車端部座席

東急8000系列は20年以上にわたって製造されたため、内装・外装ともに幾度も設計変更がなされていますが、その変遷が顕著に表れているのが車端部の座席ではないでしょうか。
なおこちらの調査は根岸旭台鉄道研究所様(http://toq-norurun8247.travel.coocan.jp/を参考にいたしまました。この場を借りてお礼申し上げます。

1)非軽量車

デハ8715(7-1次車・未更新車)

6次車〜11-1次車、12-2次車は車端部は4人掛けで設計されました。寸法1725mmで一人当たり431.25mm。現代人には少々窮屈すぎます…4人で座っているのはほとんど見たことがありません。
また、ドア脇の立ちスペースがありません。

2)13次車・14次車

サハ8958(14次車)

13次車・14次車(+8500系に存在しない12次軽量車)の車端部は4人掛けではなくなりました。
寸法1555mmで3人掛けだとすると一人当たり518mmと結構贅沢な幅です。
ドア脇の立ちスペースも確保されました。

3)15次車

デハ8876(15次車)

14次車までで、すでにかなり贅沢だった車端部座席ですが、15次車ではさらに肥大化しました。
寸法1600mmで3人掛けだとすると一人当たり533mm。最近の車両の標準的なシートピッチは大体450mmですから、どれほど広いのかが分かります。
ちなみに一人当たり450mmで計算すると、約3.5人掛けになるので、3人で座ると結構なスペースが余ります。混雑時には立客が嫌がりそうな座席ですね。
座席が長くなった分、ドア脇の立ちスペースが狭くなりました。ドアと座席蹴り込み板の間にある金具の形状で、どれだけ座席が伸びたかが分かるかと思います。

4)16次車・17次車・18次以降の組み込み車

デハ8884(16次車)

さすがに設計者も座席が大きすぎると認識したのか、16次車では長さが大幅に短くなりました。寸法1440mmで一人当たり480mm。これでもかなりゆとりのある座席ですが、15次車の座席を見た後だと狭苦しく見えてしまいますね。
ドア脇立ちスペースもかなり広くなりました。両方を考慮すれば一番バランスの取れた座席なのかもしれません。

5)18次以降の編成車

サハ8980(19-1次車)

8637F以降の編成車は9000系に準じた袖仕切りに変更されました。座席寸法自体は4)と変更はなく、5年以上続いた座席寸法の紆余曲折もようやくここで蹴りが付いたようです。
20次車以降は蹴り込み板の形状が変更されましたが、残念ながら写真はありません。


デハ0803(18次車)

完全な余談ですが8637Fの座席の蹴り込み板には2種類のものが混在しています。1枚上のサハ8980は蹴り込み板の横向きのメッシュが3列ですが、このデハ0803は4列になっています。観察したところ8637Fで4列になっているのはデハ8537とデハ0803のユニットのみで、ほかはすべて3列でした。
8500系全体でも4列メッシュのものは少数派のようで、もうちょっと調査してみたいところです。

6)更新車

サハ8916(7-2次車・更新車)

1997年度〜1999年度に更新された8500系の非軽量車は1)からこの6)に更新されました。タイプ5)に似ていますが、蹴り込み板がメッシュ状になり、座席もバケットシートになりました。

7)後期更新車

デハ8728(8次車・更新車)

8500系のなかで最後に更新された5本(8619F、8621F、8622F、8624F、8630F)は車内下り寄りに消火器スペースが設置され、壁吊りだった消火器が収められ見栄えが良くなりました。
その分座席全体はドア寄りに移動し、ドア脇の立ちスペースは減っています。8624Fに組み込まれていたデハ8841は8500系軽量車で唯一の更新車ですが、非軽量車と同じように消火器スペースが設けられました。
現在も長野電鉄T6編成の先頭車デハ8516として活躍しています。


12.主抵抗器形状

1975年度に製造された7次車までと1976年度に製造された8次車以降とで、デハ8500とデハ8700の主抵抗器の形状が異なるようです。


デハ8516(7-2次車)

デハ8529(9-2次車)

7次車までは側面のメッシュが一段引っ込んで配置されています。また、妻面のメッシュが丸形です。
8次車以降は側面のメッシュは抵抗器外装カバーと同一平面上に配置されています。また、妻面のメッシュは横に潰れた六角形をしています。

さらに、14次車以降は、抵抗器上部にひさしが追加されています。


デハ8531(15次車)


13.パンタグラフ

冷房装置が変更された18次編成車以降はパンタグラフの形状が変更され、小型化されています。


デハ8536(17次車)
PT-4309S-A-M型パンタグラフ


デハ8537(18-1次編成車)
PT-44S-D-M型パンタグラフ

この変更は冷房装置の大型化(RPU-2204→RPU-2214)によってパンタの折り畳み長手方向に制約が出たためです。
また、なぜか長野電鉄譲渡車の一部がこの小型タイプに似たものに交換されているようです。同一品なのでしょうか?


T1編成
デハ8501:小型


T5編成
デハ8515:従来型
デハ8505:従来型


T6編成
デハ8516:小型
デハ8506:従来型


14.前面貫通扉

通常の8500系の前面貫通扉は、ガラス支持のHゴムの周りが一段引っ込んでいて、額縁のようなスタイルになっています。


デハ8519
←で示した部分の反射で、窓周りがくぼんでいるのがよく分かるかと思います。

ところが、デハ8526とデハ8633にはこのくぼみがなく、Hゴムが貫通扉表面に対して一段飛び出たような形になっています。


デハ8526:くぼみなし


デハ8521:くぼみあり


デハ8633:くぼみなし


デハ8631:くぼみあり

ただ窓周りの処理が違うだけなのか、と思いましたがそうではないようです。


デハ8526


デハ8633

いずれも失敗写真で恐縮ですが、夕日を浴びるデハ8526の写真から、本来の8500系のステンレス地肌に比べてツヤがないことが分かります。また検査明けのデハ8633の写真から、若干白濁した素材であることも分かります。末期の8500系の中ではこの2両しか交換されていなかったようです。


15.前面絶縁体回り込み

8500系の屋根は絶縁塗料で覆われていて、その塗料は前面部上部まで若干回り込んでいますが、なぜか8616Fのデハ8616のみ、その回り込み量が若干多いです。


デハ8616


デハ8622


デハ8628


デハ8631(参考)

明らかにデハ8616の塗料がボテッと前面のステンレス部まではみ出ているのがお判りでしょうか?
比較でデハ8631も出してみましたが、こちらはキャンバス押さえが無くなったことも相まって非常にキレイですね。

大した違いじゃないだろ、と思うかもしれませんがこれが結構目立つのです(というかそこに目が行くようになります)。


デハ8616


デハ8622

やはりデハ8616だけ少し顔が違って見えるのは、この"おでこ"が原因なのではないでしょうか。
ファインダー越しにおでこを確認して8616Fだ!と気づくことも度々ありました。


16.非軽量クーラーキセ

8500系をはじめとする8000系ファミリーは、非軽量車と軽量車の間でクーラーキセが違うことで有名ですが、非軽量車タイプのなかだけでも数種類あるようです。

●側面

タイプ1(おそらく最も一般的なタイプ)
キセが平滑です。


タイプ2
キセに縦筋が1本入っています。
タイプ1よりメッシュの中が鮮明に見えていますが、クーラーの中身はたびたび交換されていると聞いたことがあるので、ここでは触れないことにします。


タイプ3
キセに縦筋が3本入っています。
 
面白いのが、この3つのクーラーはすべて同一編成に搭載されていたという事です(秩父鉄道7001F)。
この縦筋は後付けなのか?補強用なのか?など、謎が尽きません。

●妻面
こちらは撮影していて気付いた方も多いのではないでしょうか。




デハ8619

よく見ると、キセ両肩に・が付いているものとついていないものがあると思います。
近くで観察すると、ただの印刷などではなく、キセに突起があり、そこに汚れがたまって・印を形成しているようです。
上のデハ8619では有→無→有→無の順ですね。




デハ8517

こちらは有→有→無→(視認できず)の順ですね。
先頭のクーラーキセに・があると、意外と目立っていたりします。

この・に注目していると、8619Fにある変化が起きていたことに気づきました。




上: 2020年9月撮影
下: 2020年3月撮影

拡大してみましょう。




上: 2020年9月撮影
下: 2020年3月撮影

2020年9月では渋谷寄りから有→無→有→無だったのに対し、その半年前に同じ場所で撮影した写真では、無→有→無→有だったのです。つまり1車両丸ごとクーラーまたはクーラーキセを交換した可能性がある、ということです。


8619F(2020年5月末撮影)

これがクーラーが入れ替わる前の最後のカットでした。写真アルバムを見返す感じですと、2020年5月末〜2020年8月上旬のどこかでこっそり検車区にて入れ替えられたのでしょうか…謎深し。

●唯一の存在?サハ8947




サハ8947

"非軽量車に軽量車用の凹みのあるクーラーを載せた車両"はそこそこあります(デハ8614の4基フル搭載は有名)が、その逆パターン、"軽量車に非軽量車用のクーラを載せた車両"は激レアでした。末期ではサハ8947しかいなかったのではないでしょうか。どうしてこうなった…

ちなみに8500系が長津田検車区のこの位置に止まっていると、3号車のサハの直上に跨線橋が架かるので、このように豪快に眺めることができました。


17.軽量クーラーキセ

軽量車と非軽量車のクーラーキセの差異点として、キセ側面の凹みの有無はよく知られていますが(上写真参照)、どうやらキセの背の高さも違うようです。


デハ8522

先頭から2つ目のクーラーキセに側面の凹みが確認でき、軽量車のキセに換装されていることが分かります。拡大してみます。


高さが分かりやすいように、両側の非軽量キセの角の高さを赤線で結んでみました。軽量キセだけ僅かですが高さが低いように見えます。
これだけでは説得力に欠けるので、別の車両でも確認してみましょう。


デハ8626
4つ目のキセがやや小ぶりのように見えますが、側面を見ると凹みがあり、軽量キセですね。


デハ8526
少しわかりにくいですが、やはり3つ目の軽量キセは周りのキセに比べて一段低いように見えます。

あくまで推測ですが、屋根R変更による屋根高さ変更でキセ高さを削らざるを得なくなり、このようになったのでしょうか。
かなわぬ夢ですが、実際に自分の手で計測してみたい箇所です。(^_^;


以後随時追加していきます。

(2020.7.25)
(2020.7.26)
(2020.8.16)
(2021.7.20)
(2023.12.30 改訂・ブログから移設)